「依存」という言葉を辞書で引くと「他の物によりかかり、それによって成り立つこと」と書いてあります。「人という字は、1人の人がもう1人の人を支えている字です」という名言もありますが、人はみな何かに支えられて生きています。支えているものは、人だったり、趣味だったり、信条だったり、色々でしょう。そう考えると、誰もが何かに依存しているということになります。何かに依存していても、生活がうまく回り、健康が維持できていれば問題はありません。

ただ、依存しているものによって生活や健康が損なわれてしまい、「これ以上やってはいけない、もうやめなくちゃ・・・」と思いつつもやめられないのは依存症という病的な状態です。お酒、たばこ、パチンコなどのギャンブル、ゲーム、ネット、恋愛、買い物など色々なものが病的な依存の対象になります。当初は楽しくいいものであったり、ストレス発散に役立っていたものが、いつのまにかコントロールを失い不健康につながる結果になってしまうのが依存症の怖さです。

依存症を発生する過程には、ストレスや、不安、寂しさなどの辛い感情が関わっています。辛い状況をどうにかしようと無理を重ねながら、気を紛らわそうとお酒を飲むうちに徐々に量が増えてしまいアルコール依存症に陥ってしまう、など依存症に悩まれる患者さんのお話をお聞きすると、孤独な闘いが見えてくることが珍しくありません。残念なことに、依存症にはいまだ社会の偏見や無理解もあり、周囲の人だけではなく患者さん自身も「意志が弱いから、甘えているから」などとご自身を責める方もいらっしゃいます。けれども依存症は脳の病気であり、意志の問題ではありません。回復には適切な治療を受けることが大切です。

依存症の治療は、現在の生活の状況などを詳しくお聞きし、ストレスの原因や、依存を強める状況を探りつつ、依存から回復する道筋を一緒に考えていきます。うつ病や、不安障害といった他の心の不調も伴っている場合などにはご相談の上お薬を処方することもあります。必要に応じて、専門的な治療機関や、自助グループなどをご案内いたします。アルコール依存症など身体的な治療が必要な場合には、治療が可能な病院をご紹介させていただきます。

依存症からの回復は1人では困難です。こんなこと相談していいのだろうか、と受診することをためらわれる方も少なくありませんが、まずはお気軽にご相談にいらしてください。回復への一歩を一緒に踏み出せればと思っています。

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